意外と知られていない不動産取引の保証システム

不動産取引の保証システム

賃貸事務所を借りる、一戸建てを買うなど、不動産の取引では不動産会社の何らかの不手際や不注意でトラブルになってしまうケースが時にあります。

中には、当初の目的が達成できないなど、損害が発生する事も。

そのようなことが起こってしまった場合、損害賠償を請求するのが当然だと思いますが、不動産会社に支払い能力が無い、または、すでに存在していない、なんてことになったらどうすればいいのでしょうか。

今回は、そういう時のために知っておいてもらいたい供託所や保証協会のことについてご紹介したいと思います。

重要事項説明では、供託所や保証協会がどこにあるのかという説明はされますが、内容まではあまり説明されていませんので、ここでその内容についてご説明します。

どこに請求すればいいの?

重要事項説明書に記載されている供託所

重要事項説明書には、必ず供託書が記載されているはずです。
記載されている供託所が、その不動産会社が営業保証金を預けている供託所ですので、不動産の取引で損害が発生した場合は、そちらに請求することができます。
また、供託所と共に保証協会が記載されている重要事項説明書がありますが、それは、その不動産会社が保証協会に加入していることを意味します。
後述しますが、その場合は直接供託所に請求はできませんので注意が必要です。

 

保証協会の記載があったら

供託所とともに重要事項説明書に記載されている保証協会が記載されている場合でも、最終的に供託所に請求することはかわりませんが、先に保証協会にその請求する内容を認めてもらわなければなりません。
認証されると認証書を保証協会からもらえますので、それをもって供託所に行くことになります。
つまり、保証協会に加入している不動産会社が取引した相手の場合は、ひと手間かかるという
ことですね。

なぜ保証協会に加入しているのか

不動産業者は業務を開始する時に営業保証金を供託することで、取引の相手方への損害の担保としています。
しかし、その額は高額なため、新設する会社には大きな負担となってしまいます。
そこで、もう一つの方法として保証協会に加入する方法があります。
直接供託所に営業保証金を供託するのではなく、保証協会に弁済業務保証金分担金を納付することで
営業保証金を供託したことと同等の担保とすることができます。
負担を減らせることから、大半の不動産会社がこの方法を用いています。

ほとんどの不動産会社が保証協会に加入していると思いますので、損害の請求は、まず保証協会に認証してもらうということになります。

請求できる上限額(保証限度額)はいくらまでか

損害額の証明ができればいくらでも補償してもらえるかということではなく、不動産会社が営業保証金として供託している額によって異なります。
供託する額は以下のように定められています。

 供託金額

本店 : 1000万円
支店 : 500万円(1か所につき)
この金額が、供託所に損害請求できる限度額となります。
例えば、本店と支店が2か所ある不動産会社の場合は2000万円までということになります。

 

保証協会に加入している場合でも保証限度額は同じ

不動産会社は、保証協会に加入する場合、営業保証金を供託しないで納付金だけを納めます。

納付額

本店 : 60万円
支店 : 30万円(1か所につき)

これだけを見ると、損害を請求できる限度額が少ないと思われてしまうかもしれませんが、保証限度額は供託所に営業保証金を供託している場合と同じです。
保証協会は、加入している不動産会社から分担する形で納付を受けて、供託所にその納付額に相当する保証金を供託します。

ですから、保証協会に入っていても入っていなくても、不動産会社が供託所に直接供託しているのと保証限度額は同じです。
本店一か所のみで保証協会に加入している場合では、1000万円までということになります。

請求方法の相違点

では、実際に損害を被ってしまった場合、どのように請求すれば良いのか。
それは、相手方の不動産会社が保証協会に加入しているかいないかで変わってきます。

保証協会に加入していない場合

供託所に直接請求することになります。
供託所に、『供託物の供託物払渡請求書』を提出し、不動産会社が供託した営業保証金の中から受けることができます。これを営業保証金の還付と言います。
請求書には、供託物の還付を受ける権利を証する書面等を添付することと決められています。
権利を証する書類とは、取引によって生じた債権を有することを証明する債務確認書や確定判決など
です。払渡請求書は供託所に無料で備え付けられていますので、記入して提出します。

保証協会に加入している場合

まず保証協会の認証が必要になります。
債権者が保証協会に認証申請をし、申出に基づき、申出が宅地建物取引に関するものであるか否か、申出者の有する債権の金額の算定などの認証を保証協会が行います。
認証されると認証書の交付を受け、その認証書をもって供託所に還付請求を行うことになります。

認証書を受け取った後は、上記の「保証協会に加入していない場合」と同じです。供託所で『供託物の供託物払渡請求書』を提出する際に、認証書を添付して下さい。

 

供託していない、保証協会にも入ってない

不動産会社が供託所に担保として金銭等を供託していたり、保証協会に入ったりするのはわかったけど、
それをしていなかったらどうするのかという疑問を持つ方もいると思います。
しかし、不動産取引を行うための不動産会社を設立するには、供託金が必須であると法律で定められています。免許を受けていても供託したことを届けなければ営業をしてはいけないという決まりがありますので、
一定期間内に届出がなければ不動産免許は停止または取消となってしまいます。
したがって、供託していない不動産会社が不動産業を行うことが、そもそもが違法なのです。

 

不動産の取引以外はダメ

実はよく間違われてしまうのですが、不動産会社と取引をして発生した債権がすべて還付対象となるわけではありません。還付対象になるのは、「不動産の取引」で発生した債権です。
例えば、不動産会社から依頼された広告などの代金などがありますが、これは、不動産の取引では
ありませんので、供託所に還付請求できる債権とはなりません。

当てはまらない債権の代表例

  • 広告代
  • 内装工事の工事代金
  • 従業員の給料
  • 事務所の賃料
  • 借入金

このように、供託所へ請求できる債権は、不動産の取引に限られています。
あくまでも不動産の取引によって被った損害であることに注意して下さい。
(大事なことなので2回言いました!)

 

最後に

トラブルや損害賠償など、起こらないに越したことはありませんが、不動産の取引は高額であるため、時にそういうことが起こります。万が一の時の為に、供託所の事を認識し、確認してみてはいかがでしょうか。