建築基準法に定められた建物の耐震基準は、昭和56年以前(オフィスビルは昭和58年以前の竣工)の旧耐震基準とそれ以降の新耐震基準に分かれるのはご存知の方も多いと思います。しかし、その基準の違いとはどういうものなのでしょうか。
東日本大震災から5年経った今、あらためて地震に対する考え方を正すとともに、オフィスビルの耐震基準を認識しておきましょう。
新耐震基準の目的
- よく起こる規模の大きい地震に対して建物の構造に損害がないようにする
- 滅多に起こらない大きな規模の地震に対しては、致命的な損害を回避し人命を保護する
よく起こる規模の大きい地震とは、大体震度5程度を想定しており、滅多に起こらない大きな地震とは、およそ震度6強から震度7程度の震度を想定されています。
具体的にいうと、新基準では、地震による建物の倒壊を防ぐとともに、建物内の人間の安全を確保することに主眼をおいています。
旧耐震基準
前述の新耐震基準に対し旧基準は、震度5程度の地震に耐えうる建物とだけ定義されています。震度5程度の地震を中地震。それ以上の地震を大地震とすると、旧耐震基準の建物は中地震に耐えるように設計されていますが、大地震に対するチェックはされていません。
一方、新耐震基準では、中地震で建物が損傷しないことに加えて、大地震でも倒壊しないこと等が要求されています。
新耐震基準に移行した背景
旧耐震基準では、震度5程度の地震に対して即座に建物が崩壊しないことを定めていましたが、1978年の宮城県沖地震(震度5・マグニチュード7.4)で多くの家屋倒壊被害が発生したことがきっかけとされています。
過去の実質効果
過去の比較的大きな地震でみてみると、震度7が観測された阪神淡路大震災(1985年)、記憶に新しい東日本大震災(2011年)では、新耐震基準で施行された建物で、中にいた人が避難する間もなく建物が倒壊したというケースはほとんど報告されていません。
絶対的な安全はない
新耐震基準は、その基準を満たしていれば、100%安全ということを保証するものではないことに注意が必要です。
なぜなら、今の耐震基準は現時点での識者の知見と技術レベルで決められた最低ラインに過ぎないということ。複雑な自然現象である地震は、建物が絶対安全とは言い切れません。
もう一つ絶対的に安全とは言えない理由に、連続して起こる大地震を想定したものではないということ。震度6以上の地震が発生しても即座に倒壊しないことを前提にしていますが、連続で起きた場合には100%といえないでしょう。
終わりに
現実的には、想定を超える地震が起きても倒れなかったというケースが多くありますので、新耐震基準のオフィスビルであれば、安全であるといえるかもしれません。
しかし、新耐震基準のであっても、想定のさらにその上をいく自然災害に対しては、限界があります。その時のためにも過去にあった災害を風化させず、日頃から備えをしておくことが一番大事なのではないでしょうか。
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