最近、インターネットのニュースなどで、見かけるようになった「民法改正」というキーワード。
大幅な変更は、なんと120年ぶり!ということで話題になっています。
改正する背景としては、経済や社会が大きく変化し、現在の運用に、いろいろと不具合が出てきたということでしょうか。
特にインターネットの登場は大きいと思います。
さて、この「民法改正」いったいどこがどう変わるのでしょうか。
今回の改正で検討対象とされているのは、約400条と多岐にわたり、とても多いです。
ポイントは契約と債権
今回の改正は主に契約と債権に関わる部分のようです。
民法5編(総則・物権・債権・親族・相続)のうち、総則と債権にあたる部分となります。
その中でも大きな話題となっているのは以下の4つ
- 保証人の保護
- 敷金返還と原状回復
- 法定金利の引き下げ
- 時効
この4つが今回の改正では大きなポイントになるでしょう。
この中で、不動産の賃貸契約に関わってくるであろう「保証人の保護」について解説していきます。
第三者による連帯保証は原則禁止…ではない
今回の民法改定では、保証人の保護を強化しています。
父親が事業を営み、その借金を家族が連帯保証をしていた場合、その事業が破綻してしまうと家族すべてが破産してしまうなんて最悪なこともありえます。
「保証人になったことで大きな損害を被ってしまった。」っという話もよく聞く話です。
そのような被害を少なくするように、今回の改正では、企業向け融資に関して以下のような内容で進めています。
「第三者による連帯保証の原則禁止」
このフレーズ、今回の改正にあたってよく耳にします。確かに当初はこの方向で話を進めていたようです。しかし、原則禁止としてしまうと、中小企業が融資を受け難くなるのではという懸念事項も出てきたため、改めた仮案では以下のようになっています。
企業向け融資において以下の2点がポイントになります。
- 主たる債務者と一定の関係にある者(取締役や執行役、同社に籍を置く配偶者など)は、例外として第三者には該当せず連帯保証人になることができる。
- 第三者が連帯保証人になる場合には、保証契約締結1ヶ月以内に公正証書による保証人となる意思表示を明示すること。
つまり、禁止というよりは制限ができたということですね。
極度額設定の義務化
軽い気持ちで友人の会社が借りる賃貸事務所の連帯保証人になった場合で、その友人が突然、家賃を滞納したまま行方不明になってしまい、滞納家賃や原状回復費用などの思いもしていなかった金額が請求されてしまった。なんていうことも起こりえるのが保証人という制度です。
この点から見て、今回の改正では、以下のように定められます。
- 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないものの保証人は、極度額を限度として保証債務を負うことが規定され、かつ、書面により極度額を定めないと保証契約自体が無効となるように規定される。
※一定の範囲に属する不特定の債務 : 不動産賃貸では家賃や共益費、原状回復工事費などのことを指します。
つまり、個人の保証人の場合、予め保証する債務の最高額を確認してから保証契約を結ぶことになりますので、万が一のときも想定外の高額な請求はされませんし、そもそも極度額を決めていない契約は無効ということで無かったものとされます。
不動産賃貸借では、賃料債務を担保するため、連帯保証人を設けることが一般的です。
改正後は、上記の規制を受けることになります。
高額な極度額の場合、保証人になることをためらうことが想定されますので、今後は、法人による保証や保証会社よる保証を求められることが増えていくと思います。
情報提供義務
保証人保護の点から、以下のような義務も追加されるようです。
- (契約締結時)
事業のために負担する債務について、主たる債務者の委託を受けて個人が保証する場合、契約締結に際し、主たる債務者が、保証人に対して自己の財務状況等を説明する義務。
★事務所など事業のために借りる人から、保証人になることを頼まれて保証する場合は契約を締結するときに、本人(実際に借りる企業や人)の財務状況を確認しておくことが義務化されます。 - (履行状況)
委託を受けた保証人から請求があった場合に、債権者が、主たる債務の履行状況等について情報を提供する義務
★保証人は、債権者が本人への請求や本人からどれくらい返済されているかなどの状況についての情報を請求すれば教えてもらえます。 - 期限の利益(期限がくるまで請求されない)を喪失した場合に、債権者がこれを知ったときから2ヶ月以内に保証人にその旨を通知する義務
★請求される期限が切れた場合に、債権者はそれを知ったときから2ヶ月以内に保証人にお知らせしなくてはいけません。
不動産賃貸借に大きく影響しそうなのは1の契約締結時の情報提供義務です。
義務違反があった場合、それを債権者が知り、または知ることができたときには、保証契約自体を取り消すことができますので、賃貸事務所などの事業用で借りる場合で、個人を保証人とするときは、注意してみてください。
保証人の保護という点では、これまでよりも安心できると思いますが、保証人に成り難くなるという事は否めません。前述しましたが、今後は保証会社や法人による保証などに頼ることが増え、また新たに何らかの保証制度が必要になっていくことになるでしょう。
将来的に、事務所等を借りる予定がある方は、この保証人の保護という点を頭に入れておいてください。
次回は、民法改正に関する、「敷金と原状回復」についてご紹介したいと思います。
そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
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