賃貸借契約を公正証書契約でする!と言われたら

賃貸事務所の賃貸借契約では、それほど多くありませんが、物件によっては
公正証書による契約を締結する場合があります。
一般的な契約書の私文書とは違い、公的な書面として扱われるということはなんとなくわかりますが、
具体的にどのような違いがあるのか一般的には知られていないと思います。
事務所の移転による物件探しでは、多くの物件を見ることになります。
気に入った事務所の契約が公正証書による契約という事もあるかと思いますので、
ここで、普通の契約との違いと注意することを参考にしてみて下さい。

法務大臣任命の公証人が作成

まず、公正証書とは、法律の専門家の中から法務大臣が任命する「公証人が作成する文書」です。
私文書と異なり、国の機関が作る文書ということで以下の効用があります。

  • 証拠力
    公に証明された公文書として推定を受けていますので、
    裁判の際には、強力な証拠として扱われます。
  • 安全
    公正証書の原本は、公証人役場で厳重にに保管されます。
    紛失や偽造、変造のおそれがありませんので、安全です。
  • 信用
    公証人は法律に違反するもの、また無効な法律行為による証書は
    作ることができません。また、当事者双方の本人確認も厳格に行われますので、
    内容的に安全な契約ができるということになります。
  • 執行力
    当事者の相手方が契約違反を起こした場合、
    直ちに強制執行をする旨と債務者が直ちに服するという記載がある公正証書であれば
    その公正証書は裁判所の判決と同等の執行力を持ちます。
    つまり、裁判を行わなくても執行する力を持っているということです。

このように、普通の私文書に比べ、より厳格な契約が結べるという特徴があります。

では、これらを踏まえて借りる側にとって具体的にどのような点が普通の契約と違い、
注意する点なのか見ていきたいと思います。

強制執行

一番の違いと注意点は、一定の条件を満たしていれば「賃料の支払い等を強制執行できる」という点です。
公正証書によらない普通の契約の場合で、賃料滞納等の契約違反が起きてしまった時、
まずは、電話や手紙などによる督促をするのが一般的だと思います。
通常はこの時点で話合いなどで解決をするのですが、そうも行かない場合があります。
そうなってしまうと次は訴訟ということになり、裁判の判決を待って、
強制執行という手段で滞納賃料を回収するということになります。
この強制執行は、かなり強力な手段ですので、裁判で勝訴して初めて認められる方法です。
それに比べ、公正証書による契約では、その裁判手続きや判決を待たずに執行できる効力があります。
前述の執行力でも書きましたが、賃料未払いなどの契約違反があった場合には、
直ちに強制執行をされても異議がない、債務者が強制執行に服する旨」の記載があるなど一定の
条件を満たしている公正証書であれば、判決と同等の効力、つまり裁判手続きを端折って執行できるという
ことになります。
この点は借主にとって、とても重要なので、よく契約内容を見て確認すると良いでしょう。

公証人手数料

公正証書契約にするには、「公証人役場に支払う手数料」がかかります。
この費用負担は、契約当事者双方の折半が一般的ですが、協議の上、割合を変更するケースもあります。
費用は目的物の価格によって変わりますが、賃貸事務所の契約の目安としては
5,000円~20,000円その他に印紙税として4,000円程度がかかります。
印紙税は契約書のページ数によって異なります。
通常の契約よりも余分な費用がかかるという点に注意です。

公証人役場での確認や聴取

公正証書による契約は、当事者本人、またはその代理人が公証人役場に
出向いていかなければなりません。本人確認書類の提出や契約内容の聴取・確認を行い、
晴れて署名捺印ということになります。
「公証人役場に出向いて契約」というところが、一般的な契約とは違います。
厳密に聴取や確認を行いますので、普通の契約よりも手間がかかるということになります。

このように公正証書契約と普通の契約では大きな違いあります。
より厳密な契約書ということもあって、普通の契約とは違い手間と費用がかかるという点と
訴訟の際の効力が強いということですね。
借主側から見ると不利(デメリット)なように見えると思いますが、上記の点さえ注意して
理解しておけば、裁判での効力は双方に有効ですし、契約内容の信用性や安全面は高い
ものになる契約なので、安心して契約することができると思います。

物件を探していく中で、公正証書契約の物件がありましたらぜひ参考にしてみて下さい。
オフィス移転時の判断材料として活用してもらえれば幸いです。

 

※一般的な賃貸事務所の契約では、公正証書にするかどうかは、当事者の自由ですが、
不動産取引に含まれるものの内、事業用定期借地権の設定契約だけは公正証書によるとされています。