賃貸の事務所物件や店舗物件を探している際に、物件広告などに「権利金」という普段あまり見慣れない項目があるのを見た方はいらっしゃいますでしょうか。
「何の権利?」と疑問に思いますよね。
この権利金に対して、よく言われているのは「礼金と同じようなもの」という扱われ方。
しかし、礼金と権利金はその意味や本質的な部分で違いがあります。
その部分を明確化していないまま授受したことによって、特に店舗では、後々トラブルになる場合があります。といいうことで今回はちょっと珍しい「権利金」について説明したいと思います。
権利金と礼金の違いとは何か。
まずは礼金と権利金の共通点について見ていきましょう。なぜ同じように扱われるかが分かると思います。
- 契約時に一時金として支払われる点
- 敷金や保証金と違い、契約終了時に返還されないものであること
この2点が共通しているので、同じもののように扱われています。
では、何が違うのかというと、「お礼」と「対価」という性質上の違いと、住居の賃貸では権利金という概念がないということ。
つまり、「礼金は、貸主へ支払うお礼」で、「権利金は、『賃貸物件における対価』」ということになります。住居は権利金がないというのは、その対価が主に営利目的の事業用の利用に対してのものだからです。
賃貸物件における対価とは
それでは、権利金にはどのような対価性があるのか見ていきましょう。
- 立地的権利に対する対価
駅前や人通りの多い商店街など、商売の営業的に優位性のある立地に店舗を構えるとか、賃貸する場所が他と比べて優れているときなどを評価して支払われるもの - 賃貸借設定の対価
貸主の将来発生するかもしれないリスクに備える費用。現行の借地借家法では、借主を特に保護した規定となっています。その中に貸主からの中途解約は正当事由が必要というものがあります。つまり、場合によっては、半永久的に貸し出す可能性もあり、その間は貸主自身が利用できないということになります。そういう貸主の権利が制限されることに対して、借主の権利が強いことを踏まえて契約を締結した対価として支払われます。 - 営業の利益の対価
これは事務所に関係ないかもしれませんが、商売を引き継ぐ場合などに用いられます。例えば老舗ののれんを引き継ぐなどがこれにあたります。 - 賃料の一部を一括払いする
賃料が高くて借り手がつかない場合などに、定額の賃料を下げて、賃料の一部を一括して前払いするもの
実際に支払う権利金は、上記のいずれか、またはこれらの組合せです。
権利金の返還
権利金は礼金と同じく、返還されるものではないと前述しておりますが、一部ですが返ってくる場合もあります。
- 契約期間満了により終了した場合
× 返還されない - 契約期間の定めがない契約の中途解約
× 返還されない - 契約期間の定めがある契約の中途解約
○ 返還される
一般的な賃貸契約の場合、契約期間というのは決まっていますので、中途で解約した場合は、一部ですが返還されると想定されます。なぜなら、契約時に契約期間が定められているということは、当然その期間を前提とした権利金の額が定められたと推定されます。
したがって、契約期間の途中で、契約を終了する場合は、未経過の期間に相当する権利金が返還されます。実際の判例でも証明されています。
一方、期間の定めがない契約の場合は、返還が一切認められないという判例がありますので、契約期間満了と同様に返還されません
まとめ
自らの事業に照らして、権利金の対価が見合ったものなのかどうかは慎重に判断してください。対価以上の利益が見込めるのならいいですが、曖昧に判断してしまうと思っていたような収益が上がらない等、事業計画自体に支障がでることも考えられます。
権利金の本質的な意味を理解し、契約時に明確化してもらうことがトラブル回避につながり、経営上の利益にも反映されます。契約する物件に「権利金」が登場してきたら、ぜひこの記事を参考にしていただき、権利金は何に対しての対価なのかハッキリしてもらい、納得した上で契約するようにしてください。
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