賃貸事務所など、賃貸物件を借りる際には多くの場合、連帯保証人を求められます。
賃貸事務所などの事業用として企業が借りる場合は、その企業の代表者が個人として
立つことが多いのですが、中には別の方を立てるように求められる物件もあります。
さて、この連帯保証人制度。
家賃が払えなくなってしまった借主の代わりに債務を保証することは分かりますが、
責任はどれほどのものなのか、辞める事はできるのかなど
連帯保証人になるということが、実際にはどういうことなのか、
ご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、「連帯保証人になるということは、どういうことなのか」について
書いてみたいと思います。
保証人と連帯保証人の大きな違い
大きな違いとしては、以下の3つが挙げられます。
民法で定められているのですが、法律用語を使うと「分別の利益」とか、「催告の抗弁権」というのは、
解りづらい用語ので、ここではわかりやすく説明します。
- 本人(契約者)に請求してくれと言えません。(催告の抗弁権)
単なる保証人の場合、貸主から家賃を払うように請求されても、「先に本人に言って下さい」
というように請求を拒否することができます。
連帯保証人の場合は、この本人に請求してくれというように突っぱねることができません。
つまり、請求をされれば素直に債務を支払わなければならないということになります。 - 何人いても分割できません。(分別の利益)
例えば、債務が90万円とします。
保証人が3人であったなら、一人は30万円しか返済する義務がないのに対し、
連帯保証人は、何人いたとしてもそれぞれが総額である90万円の返済義務があります。 - 本人の財産を証明しても対抗できません。(検索の抗弁権)
契約者本人に十分な財産があり、支払い能力がある事を証明すれば、
その財産を差し押さえるように主張することが、保証人ならできます。
しかし、連帯保証人の場合は、いくら証明しても対抗することができません。
このように保証人と連帯保証人の責任は大きく違います。
まとめると、連帯保証人は「いつでも」「全額」を請求されることがあり、
それを突っぱねる権利がないということになります。
つまりは、債務に関しては本人と一緒の責任ということですね。
請求されたらどうなる
本人が家賃などを支払えなくなった場合には、貸主から連帯保証人に請求がきます。
この場合は連帯保証人としての責任を免れることはできませんので支払わなければなりません。
このような状況になった場合想定されることは2つ。
支払った場合と支払えなかった場合です。
- 支払った場合
連帯保証人は自分が貸主に支払った金額を主たる債務者(本人)に請求することが
できます。これを求償権といいます。
また、本人からの回収が困難な場合でも、自分とは別に連帯保証人がいる場合には、
連帯保証人の頭数で割った分を他の連帯保証人に請求することもできます。 - 支払えなかった場合
連帯保証人の債務は基本的に一括での支払いです。
その為、支払いたくても支払えないということも可能性としてあるでしょう。
その場合、本人同様の責任を負うので最悪の場合は、自己破産や任意整理などが
必要になってくるでしょう。
連帯保証人契約を解除したい
このようにとても重い責任を負い、何のメリットもない連帯保証人。
誰も好き好んでなるわけではないと思いますので、なったはいいけどやっぱりやめたい、
契約を解除したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
でもこの連帯保証人の契約解除は容易ではありません。
本人が支払えない時の人的担保的な意味がありますので、当然といえば当然ですね。
原則として、債務がなくなるまでは解除することができません。
連帯保証人をやめる唯一の方法は、合意解除しかありません。
法律に定められている契約の解除事由は、「法定解除」「約定解除」「合意解除」の3つです。
- 連帯保証契約は、債権者に義務がないので債務不履行とはなりません。
したがって法定解除はできません。 - 保証契約の内容は、債権者に一方的に決められますので、約定解除もありません。
- お互いに合意して解除する合意解除だけが、連帯保証契約を解除する方法です。
具体的には、自分と同等の別の連帯保証人を認めてもらうことや、不動産を担保に
差し出すなどが考えられます。
連帯保証人になる人
賃貸事務所の契約では、主に代表者の方が個人としてなるケースが多いです。
法人と個人は別物という考えから成り立っているわけですが、物件(貸主)によっては、
現実的に見て法人とその代表者は同一として、別の連帯保証人を求められることがあります。
その場合は、引き受けてくれる方にお願いするのですが、一般的に代表者の親族か
知人が中心となってくるでしょう。
但し、誰でもなれるということではなく、相応の収入があることが条件とされます。
貸主それぞれの考え方があるので、明確な基準があるわけではありませんが、
収入が足りないなどの理由で認められなかった場合などは、もう一人の連帯保証人を
立てることで成り立つ契約もあります。
連帯保証人の必要書類
- 収入証明
- 印鑑証明
- 保証人承諾書(記名押印)
保証会社を利用する
どうしても連帯保証人が見つからない場合によく利用されるのが、家賃保証会社です。
家賃の未払いなどがあった時に、費用を肩代わりする会社で、賃貸借契約とは別に、
本人と保証会社が直接契約します。
保証料は家賃の30%~50%くらいで、内容や期間によって異なります。
昨今では、最初から契約の条件としてこの保証会社と契約することにしている物件も
よく見るようになりました。
頼み難い連帯保証人を探すよりは、便利であるといえますが、問題点もあります。
まず、保証会社との契約も審査があり、断られる場合がある事。
さらに、保証会社と契約する条件として、結局連帯保証人を要求されるというケースもあります。
そういうこともあるという事を前提に保証会社を利用する際には考慮しておくと良いでしょう。
オフィスでもマンションでも、賃貸物件を借りる場合は、連帯保証人が必要になる場合が多いです。
頼む側も頼まれる側も、連帯保証人の責任の重さを知っておくことが重要です。
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