IT重要事項説明とは

不動産取引の重要事項説明は、現状のところ宅地建物取引士が「対面」で「書面」を交付して説明することが義務付けされており、メールや電話での説明は認められていません。

しかし、2014年頃からIT活用による重要事項説明が検討されるようになり、2015年からついに実験的にインターネット電話を使った非対面による重要事項説明が行われるようになりました。

その結果をもとに賃貸の取引については、今年10月をめどに運用が開始されそうです。ということで今回は、そもそも重要事項説明はどういうもので、どんな決まりがあるのか。また、なぜIT化されることになったのか解説してみたいと思います。

 

重要事項説明の基本

不動産の購入予定者または賃借予定者に対して必ず行われるのが重要事項説明です。

重要事項説明書に記載されているのは、大きく分けて以下の4つあります

  • 対象物件の権利に関する事項
  • 対象物件に係る法令上の制限
  • 対象物件の状態
  • 取引条件に関する事項

これら4つを宅地建物取引業法で、説明すべき項目を細かく定めていて、不動産会社はそれを元に説明を行います。
説明をするにあたっては、いくつかのルールがあり、不動産業者はそれらを守らなければなりません。

  • 契約の前に行うこと
    重要事項説明は、最終的な判断をするためのものなので、説明を受けて契約を見送ることもありえます。したがって、必ず契約前に行わなければなりません。
  • 書面を交付すること
    重要事項説明書を交付して説明をします
  • 宅地建物取引士が記名、押印すること
    専任の取引士以外でもよいが、必ず記名押印をする
  • 宅地建物取引士が口頭で説明すること
  • 対面で行い、説明する宅地建物取引士の免許を提示すること

ここでポイントとなるのが、最後の対面で行うというところです。IT化(オンライン化)にともない、必ずしも対面で行う必要がなくなります。

 

IT重説の本格運用

先の通り、現状では重要事項説明は、必ず対面で行わなければならず、電話やメールも一切認められていません。

ですから、海外に在住している方や遠方にお住まいの方、また東京でオフィスを賃借予定の地方企業の担当者など、説明を受けるために時間とコストをかけて移動しなければならないのです。

このような背景の中、ITを活用することで移動コスト等が削減できるということで、国土交通省により検討されるようになり、2015年8月から2017年1月にかけてIT重説の社会実験が行われました。

その結果、IT重説が行われたのは1,071件。その内、賃貸取引は1,069件、売買取引は2件。

この結果を踏まえ、売買取引に関してはわずか2件ということから検証できないということで、見送り(社会実験継続)となりましたが賃貸仲介に関しては、懸念されていたようなトラブルもなかったということで、本格運用を目指すことになったようです。

運用開始の目処は2017年10月。それまでにIT重説ならではの守るべき事項の明確化や調整などを行っていくとのことです。

売買の重要事項説明は賃貸に比べると説明することも多く、図面なども用いて細かく説明するため時間もかかりますので、まだ現時点では難しいのかもしれませんね。再度実験をして調整していくようです。

 

IT重説が対面式と異なる点

これまでの対面式とは違う点がIT重説にはあります。

まず、対象となるのは賃貸取引のみ、個人間売買は対象外。これは前述したとおりです。それと、テレビ電話などを使うことになりますので、そういう環境が整っている方に限られることになるということ。またそれにともない、録画や録音されるということも注意したいところです。

その他に違う点は、社会実験が行われた際には説明をする前に、消費者と貸主の同意書を作成することが義務付けられていましたので、本格運用でも採用されれば、これもまた対面方式とは違うところです。

従来とは少し手間がかかるかなという印象です。

 

まとめ

IT重説をおおまかにみれば、大賛成でうまくいけばいいと切に願うところですが、これから問題点も出てくることかと思います。

重要事項説明は説明すればいいだけのことではなく、相手に理解してもらうことが大切だと考えます。従来の対面式では、取引士は相手の表情や仕草などを見ながら要所で説明を付け加えたりしながら理解を深めていきます。

それがIT化することで、どこまで再現できるかが今後の課題になるような気がします。また、物件を実際に見ないで契約をすることができるようになるので、その点も注意する必要があると思います。

インターネットでなんでも買えるようになったからといっても、不動産は現地に行かないとわからない騒音や臭いなど多々ありますので、見ないで決めるというのは後々トラブルになるのは容易に想像できます。

ですから、見ないで決めてしまうのはあまりおすすめできませんが、弊社のように事業用物件を扱っていると、地方都市に本社があり、東京支店を構えるためにオフィスを探すというお客様に、多忙の中で上京してもらうという場面が多くありますので、IT化することで、そういう状況を避けられるのは、お互いにとって利益になることは間違いないです。

今後は、対面かITかの判断は、場面によって見極めて使いわけることが望ましいと考えます。