「いっそのこと買ってしまおうか。」
ある日、オフィスをお探しの方から言われた言葉です。
なかなか希望どおりの物件が見つからなかったときに仰っていたのですが、事務所やオフィスは借りるものというイメージが定着している中、買うというのも一つの手段でしょう。
しかし、事務所を借りるのと購入する場合では、メリットとデメリットも全く違ったものになってきます。そこで今回は、事務所を購入した場合と賃貸で借りた場合を比較してみたいとおもいます。
変化するなら断然「借りる」
変化とは、ビジネススタイルや経済状況などによって業務を変化させること。
例えば、業務の拡張や新たなプロジェクトなどによって増員すること。またその逆に事務所の規模を縮小させることなどがあたります。
このような場合、事務所を購入し、所有していると身軽に動けません。
縮小により、フロアが空いたとして貸し出すとしても借り手が見つかる保証はありませんし、また売却するにしても簡単に売れるものでもありません。
したがって、状況の変化に対応しやすいのは賃貸で事務所を借りている場合といえるでしょう。もちろん、新規事業で起業したての方も「借りる」方が断然良いでしょう。
賃貸事務所を借りる場合の最大のメリットは、「身軽で変化に対応できる」に尽きると思います。
資産として残せるのは「買う」
事務所ビルを購入した場合の一番のメリットとしては、不動産資産が残るということ。また、減価償却費を計上できることもメリットの一つです。
ローンで購入したとしても支払いが終われば、毎月の支払いがないまま資産として残すことができますし、景気状況によっては売却益が出ることも考えられます。(減損する可能性ももちろんあります。)
一方賃貸では、資産として残らず、賃料は支払い続けることになり、いい表現ではないかもしれませんが、いわば垂れ流し状態ということになります。
その他のメリット・デメリット
上記と重複しているものもありますが、以下に賃貸と購入のメリットとデメリットをまとめてみます。
賃貸のメリット
- 初期費用軽減
当然ですが、初期費用は賃貸の方が少なくなります。購入の場合は頭金など諸々の諸経費が掛かります。 - 建物管理の必要なし
ビルの管理や清掃はオーナーや管理会社が行う為、管理をする必要がありません。 - 賃料の経費計上
賃料・管理費は全額経費として扱うことができます。
購入のメリット
- 資産・減価償却
購入すると、最終的に資産として残ります。もちろん、資産としての減価償却を経費として計上することが出来ます。 - 企業の格
ビル名に企業名を入れたりできる事から、企業として格があがり、信頼性の向上に期待がもてます。 - 使い方の自由度
使用に関して制限がないため、レイアウトや使い方の自由度が確保できますし、貸し出すことで収益も期待できます。 - 不動産担保の取得
担保としての不動産を保有することが出来ます。借り入れなどで有利になることもあります。
賃貸のデメリット
- 利用制限
利用についてある程度制限があります。利用時間や引き込める電話回線数など、ビルによっては利用制限があることがあります。 - 移転費用
移転の度に契約金や引越し費用が発生します。 - 賃料値上げリスク
経済状況など景気により賃料が上がる可能性があります。
購入のデメリット
- 購入費用は経費に計上できない
購入した資金は現金が不動産という資産になっただけなので、経費計上できません。
購入後の減価償却があるとはいえ、初期費用の増大は避けられません。※ - 変化に対応しづらい
拡張や縮小やビジネススタイルの変化が、所有物件のため制限されることがあります。 - 建物管理費用
固定資産税が掛かります。また、エレベータ点検など、ビル管理を外注する必要があり建物メンテナンスの費用が発生します。 - 売却損
売却するタイミングによっては減損する可能性があります。
※ローンで購入した場合でも月々の返済額は経費計上できません。但し利息は経費として計上することができます。
事務所を借りるのと買うのでは、これら様々なメリットとデメリットがあります。
比較し、それぞれを組み合わせることで、自己に適した選択をすることができると思います。
例えば、月々の支払いが家賃よりもローン返済のほうが少ないという場合。一見購入したほうがいいようにおもえますが、購入資金は経費計上できないこと、固定資産税やビルメンテ費用などを考慮すると、賃料と比較すると実は賃貸のほうが良いということもあります。
結論をいうと、どちらが得ということは無いということになります。
借りる、買うのメリットデメリットを総合的に見て、自社に最適なほうを選択することがいいでしょう。
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